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新学期。最初のイベントは球技大会だった。
俺達の試合は10時半から。間宮が米澤を応援したいって言うから、体育館に向かった。
体育館に入ると、アイドルがコンサート会場に入って来た、みたいなリアクションに包まれた。対象は、隣に居る王子。なのに王子は我関せずと涼しい顔をしている。
「あ!あっちのコートだ!」
愛する彼女を見つけて、手を振る。と、米澤も恥ずかしそうに手を振り返した。
うわー、可愛い。俺もやりたい…!
ダメダメダメ。無になるんだった。無、無、無。
…無って、どうやってなるんだ?
バカな事を1人で考えていたら、試合が始まった。
「うわ、和田、イカツッ!」
隣でタッキーが喜んでいる。
和田は、女子にしては運動神経が良い。今も本気のサーブを決めたところだ。
対して米澤は、両手を胸の前あたりで構えて、縮こまっている。こともあろうか、ボールが飛んできたら、それを泣きそうな顔で避けて。和田に罵声を浴びせられていた。
「あー、和田…泣かすぞアレ」
「ハハハ、咲、可愛い」
そんなにナチュラルに可愛いなんて言えて、羨ましい限りだ。俺は今、心の中で何回も叫んでるって言うのに。
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