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いやー、複雑。俺の人生に、こんなモテ期が来ると思ってなかった。
え、いま、何人?
五十嵐と…あ、中島はメッセージで告られて…、それからさっきの。3人。人生で告られた人数を、今年だけで塗り替えちゃったよ。
1人で体育館裏から出る。
と、また捕まった。
「哀川くん!」
ぎゃ、マジか。間宮もファンなんて要らないって言ってたけど、今なら気持ちが分かる。早く飯を食わせてくれ。
「これ、読んで下さい…!」
数人の女子の中の1人が、俺の胸に何かを押し付けて。パタパタと去って行った。見ると、真っ白の封筒。
…ラブレター、ってヤツ?
「見いーたあーぞおー」
呪われたみたいな、その声。振り返ると、タッキーがペットボトル片手に立っていた。その後ろには、ニヤニヤした間宮。
「なに、お前ら…!」
「飲み物買いに来たら、思わぬ収穫」
「ラブレター?読もう、読もう」
「読もうって、間宮…最近ダメな方向にキャラ改変されてないか?」
そこの階段に座って、封筒を開ける。
「えーっと、哀川くんへ…」
「体育祭の時から、格好良いなと思ってました…」
「あのリレー、そんなに女子ウケ良かったんだな。泥まみれになってただけじゃん」
「それが良かったんじゃない?」
「俺も泥被ろうかな…」
「いや、そういうことでは無いと思う…」
「うるっせえな、黙れ!」
まあ、とりあえず。格好良いだの、好きだの、付き合ってくれだの。そういう話と、クラスと名前。
「何これ、俺が返事を言いに行くシステム?」
「だろうな」
「で、どうすんの?」
どうすんの、って。ごめんだけど、俺はお前の彼女の事が好きなんだよ。邪魔しようなんて思ってないし、お前らには仲良くやって欲しいと思ってるけどさ。
「…そりゃ、ごめんなさい」
「え、何で?彼女作れば良いのに」
「色々な、複雑なんだよ、俺も」
すると間宮は「俺に話してくれても良いのに」と唇を尖らせた。
話せねえよ、お前だけには。お前の事を良い奴だって認めれば認めるほど、な。
「ま、そういう事で。飯食おう」
ポケットにそれを突っ込んで。やっと渡り廊下に向かった。
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