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午後の試合のためにグラウンドに向かったら、もう人だかりが出来ていた。
「さすがですな、間宮王子」
「いや、きっと君目当てだよ、レンくんっ」
「その呼び方マジでやめて…」
「な、俺のファンは居ないのかな?1人くらい居るよな?な?」
ウォーミングアップにパス練習を始めたけど、集中出来ないからすぐにやめた。
コートの外に目をやると、さっきの女子を見つけた。ラブレターをくれた、あの子。
「あ、ちょっと俺、返事してくるわ」
「え、今!?もう始まるぞ?」
「すぐ終わるから」
変にドキドキしながら待たせるのも悪いし。可能性はゼロなんだから、ハッキリ伝えた方がいい。
俺が駆け寄ったら、彼女は頬をピンクに染めた。周りの女子も騒めき立つ。
可愛いよ、そういうリアクション。可愛いな、とは思うんだけど。どうしても、付き合ったりとかは出来ない。
「あの、手紙の件だけど、」
「うわ、はいっ!」
「好きな人、居るからさ。悪いけど」
「あ、そっか…分かった」
傷付いた、その顔。ああもう、そんな顔させたいわけじゃ無いんだよ。失恋する気持ち、痛いほど分かるし。だけど、変に期待する方が辛いってことを、俺が一番分かってるからさ。
「こんなとこでごめん、早い方が良いと思って」
「あ、いえ、大丈夫です…」
「嬉しかったよ、ありがとう」
すると彼女は、少しだけ微笑った。
「あ、あの、応援するね、」
「え、俺の試合?」
「うん、」
「今から1組とやるんだけど。自分のクラス、応援しなくて良いの?」
「どうせ負けるから。哀川くんのこと応援する、」
すると、周りの女子も同調した。
なんだそれ。ま、ちゃんと応援してくれるなら嬉しいけどさ。
「おい、哀川、始まるぞ!」
コートの中から、タッキーに呼ばれた。
「じゃあ、応援してもらえる分、ちゃんと活躍するようにするよ」
「うん、頑張って」
「ありがとう、」
片手を挙げて挨拶して、コートの中に戻った。
「お前、そんな爽やかキャラだったか?」
「少女漫画のヒーローみたいだったよ」
「うるさいうるさい。とりあえず勝つぞ、」
「へいへい、頑張っても俺にはファンは付かないけどな…」
笛が鳴って、キックオフ。
そのまま快勝を続けて、俺達は優勝した。
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