20/20
前へ
/216ページ
次へ
だって、好きな人が居るって言ったら、逆算してバレる可能性がある。俺が、ズルズル引きずってる、女々しい男だって。相手はもう彼氏作って、楽しくやってるってのに。 「…そうだけど、」 「真面目かよ!誰、その好きな人!」 「言ったろ、望みないから内緒」 「望みないなら他の女いけばいいじゃん!」 いこうとしたよ。無理だったんだよ。 俺だって、忘れる努力はしてるよ…! 「…そういうの無理だから、俺」 そう言って、立ち上がった。これ以上、詮索されるのはごめんだ。 すると、米澤が呟くみたいに訊いた。 「…その人のこと、そんなに好きなの…?」 やっと、彼女の顔を見た。 涙が今にも溢れ落ちそうな、その瞳。グラグラ揺らして、俺を見る。 だからさ。やめてくれよ。 私以外のこと好きにならないで、って、そんな風に見えるよ、それ。だから嫌なんだよ、お前らとこういう話するの。 米澤のことだよ、って、言ってしまいそうだった。高校に入ってから、お前のことしか考えてないって。 「…そうだな、めちゃくちゃ好き。他の女のことなんて考えらんねーくらい」 好きだよ、米澤の事が。今でもめちゃくちゃ好きだ。 諦められる気がしない。俺の脳内のほとんどを、お前が占領してる。 「教えろよお、私達の仲だろ!?」 和田が後ろから噛み付く。 言えるわけない。言ったらもう終わりだ。間宮との友情も、なんとか皮一枚で繋がってる米澤との関係も。 「どんな仲だよ、」 それだけ返して、下駄箱に向かった。 タッキーと、間宮を待たせてる。早く行かないと。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2503人が本棚に入れています
本棚に追加