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だって、好きな人が居るって言ったら、逆算してバレる可能性がある。俺が、ズルズル引きずってる、女々しい男だって。相手はもう彼氏作って、楽しくやってるってのに。
「…そうだけど、」
「真面目かよ!誰、その好きな人!」
「言ったろ、望みないから内緒」
「望みないなら他の女いけばいいじゃん!」
いこうとしたよ。無理だったんだよ。
俺だって、忘れる努力はしてるよ…!
「…そういうの無理だから、俺」
そう言って、立ち上がった。これ以上、詮索されるのはごめんだ。
すると、米澤が呟くみたいに訊いた。
「…その人のこと、そんなに好きなの…?」
やっと、彼女の顔を見た。
涙が今にも溢れ落ちそうな、その瞳。グラグラ揺らして、俺を見る。
だからさ。やめてくれよ。
私以外のこと好きにならないで、って、そんな風に見えるよ、それ。だから嫌なんだよ、お前らとこういう話するの。
米澤のことだよ、って、言ってしまいそうだった。高校に入ってから、お前のことしか考えてないって。
「…そうだな、めちゃくちゃ好き。他の女のことなんて考えらんねーくらい」
好きだよ、米澤の事が。今でもめちゃくちゃ好きだ。
諦められる気がしない。俺の脳内のほとんどを、お前が占領してる。
「教えろよお、私達の仲だろ!?」
和田が後ろから噛み付く。
言えるわけない。言ったらもう終わりだ。間宮との友情も、なんとか皮一枚で繋がってる米澤との関係も。
「どんな仲だよ、」
それだけ返して、下駄箱に向かった。
タッキーと、間宮を待たせてる。早く行かないと。
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