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「米澤、ちょっと良い?」 振り返ると、哀川。良くない、全然良くない…っ! 「まっ、真里花っ、帰ろう!」 「私バイト…」 「知ってる!送る約束してたよねっ!ねっ?」 その手首を掴んで、慌てて教室を飛び出した。 3月。最後の期末テストも終わった。日が長くなって、少しずつ暖かくなってきている。 「アンタさ、露骨に避け過ぎ」 真里花が溜め息を吐いた。 バレンタイン、哀川にチョコを渡した。 告白するつもりが、義理だと言い切って。 その場はそれで終わったのに、いざ、翌日の放課後。 なんかマジな空気を纏って近付いて来たから、大慌てで逃げ出した。 気付かれた。絶対に気付かれた。 そう確信したから、怖くて哀川と話せない。 いつツッコまれるか分からないから、みんなで居るときは真里花にベッタリ貼り付いていた。2人きりになんて、絶対なれない。 「気付いてるもん、絶対気付いてるもん…!」 「義理って言ってたのに、あれ?間宮もタッキーも貰ってねえの?あれ?ってなったんだろうね」 「絶対そうだよーっ!」 頭を抱える。何か、別の理由を付ければ良かった。 真里花みたいに、殴ったお詫び、みたいなやつ…! 「普通に話してみたら良いじゃん、絶対告られるって」 「無いよ!無い、無い!ごめんなさいだよ!」 「何でそんなにネガティブなの?」 下駄箱で、靴を履き替える。 「…あの日から間宮が使い物にならないんだよね」 「間宮くん?」 「うん。咲の気持ちバレたんだから、両想いか確認して来いって言ってんのに。分からないとか教えてくれないとか、全然やる気ない」 それって、私の気持ちが一方通行だったから、気を遣ってくれてるだけでは…? 「とにかく。あと1週間で2年も終わりなんだから。どっかで腹括って話しなさい」 「無理だよーっ!」 「無理じゃないっ!」 結局、哀川から逃げ回ったまま、修了式の日を迎えた。
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