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「…米澤、」
「あ、あれ!真里花は?どこっ?」
わざとらしく大きな声を出して、教室を出ようとする。と、手首を掴まれた。
「逃げるな、」
振り返ると、真剣な表情の哀川がそこに居て。足がすくんだ。身動きが取れない。
「他のみんなは、」
「帰った」
「な、何で?」
「俺が頼んだから」
謀られた!と、やっと理解した。
ナチュラル過ぎて分からなかった。
間宮くん、そのルックスなら俳優になれるよ…!
「…お前さ、何で俺のこと避けてたんだよ?」
「だ、だって…」
「こっちは話してえことが山程あるってのに、」
哀川が溜め息を吐く。
その辺の机に適当に座って、胡座をかいた。
「とりあえず、コレ」
差し出した、ピンク色のリボンの袋。
「なにこれ、」
「ホワイトデー。逃げるから渡しそびれた」
キュン、と胸が鳴った。
嬉しい。貰えるなんて思ってもなかった。
すると哀川はわしゃわしゃと短髪の頭を掻いて、
「あと、これが本題だけど、」
深く、深呼吸した。目が合う。授業中でも見ない、その真面目な顔。
ーーー好きだ。
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