2502人が本棚に入れています
本棚に追加
哀川 蓮。
1年の時に同じクラスだった、野球部の男の子。
バカだしイケメンでも何でもないけど、とにかく底抜けに明るくて。周りもみんな巻き込んで、何でも楽しくしてしまうような人。
私は野球よりサッカーが好きだし、勉強でも何でもサラリとこなす、細身の男の子がタイプだった。輪の中心でガヤガヤうるさい人よりは、その横で「やめとけよ、お前ら」みたいな、冷静にツッコミ入れてくれる感じの。
だけど、毎日一緒にバカなことやっているうちに、いつの間にか。あれ?もしかして、好きなのかなって。
気付いてしまってから、メーターが振り切るまでは一瞬だった。もう好きで好きでどうしようもなくて、アイツが大口開けて笑うたびにドキドキして。毎日毎日、アイツのことを考えていた。
そして迎えた修了式。1年間の片想いに終止符を打ちたくて、決死の想いで告白した。すると物凄い笑顔で、
「俺も好き!」
って言われて。でもその後すぐに、
「今さら何だよ、来年クラス離れても仲良くしようなっ」
って、付け足された。
あっ、これ、女として見られてないな。どうにかしてまずは「女」っていう枠に入らなきゃ、って思って。
気付いたら、押し倒してキスしてて。放課後の教室で、あれよあれよとそうなって。気付いたら終わってて。
全部終わった後、アイツは服を正しながら背を向けて、低い声でこう言った。
「ごめん、」
あ、フラれた。
そう思ったら涙が止まらなくて、そのまま逃げた。
そして、今に至る。
春休み中、帰宅部の私は、一度も学校に行っていない。つまり、それ以降、アイツと初めて顔を合わせると言うことだ。
最初のコメントを投稿しよう!