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私達の席は、廊下側の窓際の一番後ろだった。つまり、哀川とは対角線上の真反対。米澤 咲と和田 真里花で、去年も同じ並びだった。 「どうしたらいいですか?」 椅子に反対向きに座って、後ろの真里花に話しかけた。 「分かりません。そもそも、何でそうなったんですか?」 と、同じ口調で返された。 何で、って言われても。押し倒してキスしたら、知らない間に形成逆転してたんだもん。 「じゃなくて!何で押し倒したのか、って訊いてんだよ!」 「それは、女として意識して欲しかったから…?」 「突然覚醒しすぎでしょ、酒でも飲んだの?」 「飲んでないです…未成年です…」 「学校で!しかもファーストキス!しかも初体験!訳分かんないよ、」 私も、訳分かんないよ。 だけど、悔しかったんだもん。私はこんなにも大好きで、頭の中は哀川でいっぱいなのに。アイツはこれっぽっちも私を意識してなかったことが。 だから反対に押し倒された時は嬉しかった。なのに「ごめん」って。ヤッといて「ごめん」って。最低過ぎるよ。 でも、どうしても嫌いになれない。なんなら、今だって大好きだ。 「…どうしたら良いですか?」 「だから、分かんないって。つーか、ヤリ逃げされたようなモンじゃん。それでまだ好きなのが信じらんないよ」 「そーだよねえ、」 「とりあえず普通に話せるように戻れば?」 「…そうだね、」 ちょうど、本鈴が鳴って。新しい担任が、教室に入って来た。
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