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体育館から、教室への帰り道。 「あ、哀川くんっ…!」 ガヤガヤと騒がしい渡り廊下で、また、声を掛けられた。今度もまた、別のクラスの女子。確か、ナカジマさん。 立ち止まると、タッキーが気付いてニヤリと微笑った。 「俺ら、先に戻ってるから」 「おう、」 向き直ると、彼女は頬を染めて俯いていた。この前の、五十嵐と同じだ。 いや、いや、いや。マジか。俺、モテ期?こう言う経験はあるけどさ。こんな立て続けに続いたことは無い。 「なに、」 「あ、えっと、その…」 顔は…五十嵐の方が可愛いな。でも雰囲気はこっちの方が好き。渡り廊下の向こうで心配そうに見てる友達も、そんなにウルサく無さそうだし。 「た、体育祭の時から、良いなと思ってて…」 「そりゃ、どーも」 「彼女、居ますか…?」 「…居ないけど、」 めちゃくちゃ、好きな人なら居るよ。イケメンな彼氏が居て、しかもそれは仲の良い友達で。全く望みナシなのにズルズル引きずってる、好きな人なら。 「じゃ、じゃあ、連絡先…」 「ああ。返さなくても良いなら」 スマホを取り出す。黒の、ヒビが入ったハードケース。比べて彼女は、シリコンの、何かのキャラクター。ナシだ、そのケース。正直イタい。 「ありがとう」 「おう、じゃ」
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