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こんなこと、ホントに起きるんだな、と思った。 下駄箱を開けたら、ザーッ!って。バサーっと色々落ちてきた。ピンク、黄色、水色。女の子っぽい、カラフルな包み。 「えっ、ええっ!?」 真冬、野球部は朝練が無い。いつもタッキーと一緒なのに、1人きりのこの状況。恥ずかしっ、最悪…! 落ちたチョコの山をバサバサと鞄に突っ込んでたら、背後から声がした。 「おはよう、成金プレイボーイ。今年は大収穫みたいだね」 ニコ、と微笑ったのは、近頃めっきり剽軽な王子だった。 「迷惑…って言ったらダメだけど、ちょっと困ってる、」 「ハハ、分かるよ」 すると間宮は鞄から紙袋を取り出して、広げた。それを自分の下駄箱の下にくっ付けて、扉を開く。と、中から溢れ出たチョコの包みが、綺麗に紙袋の中に収まった。 その、鮮やかな手付き。笑ってしまった。 「シュール過ぎるだろ…」 「毎年のことだから。中1の時は俺もそんな風に拾ってたよ、」 5年もこんなことしてんの!? そう思うと、余計に笑えた。 そんなにモテるなら、少しくらい鼻にかけても良いのに。 どれだけ性格良いんだよ、コイツ。 あ、だからモテるのか。 「それ、毎年どうしてんの?」 「食べきれないから、申し訳ないけどサッカー部で分けてる」 「そりゃそうだよな…」 「今年はタッキーにあげても良いかもね。見てアレ」 教室に着いて、中を覗くと。タッキーが机に突っ伏していた。その、哀愁漂う背中。今年も、収穫ゼロだったようだ。 「可哀想…」 「その台詞、一番可哀想だから言うなよ」 「あ、そうだね。気をつける」 席に鞄を置くと、タッキーが泣き付いて来た。けど、間宮の紙袋と俺の鞄の中をみて、すぐに自分の席に戻って。また、そこに突っ伏した。 その一連の流れが漫画みたいで面白過ぎて。申し訳ないけど、間宮と2人で吹き出して笑ってしまった。
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