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エピローグ
始業式の朝。今年も、天気が良かった。
去年よりは、足取りが軽い。だけど複雑だった。
今日からまた、アイツに毎日会える。だけど、クラスが離れたらどうしよう、って。
「おっはよ!」
バン!と背中を叩かれて、見なくても誰だか分かった。
「おはよう、真里花」
「春休み、哀川とデートした?」
「いや、なんか部活忙しかったみたいで」
「試合、見に行けば良かったじゃん」
「来るなって言われた」
「何で?」
「私が来たら、気になって集中出来ないんだって」
「ほお?愛されてますなあ、」
「やめてよ、」
昇降口に着いて。硝子戸に、いつもの様にクラス割りが貼ってあった。
私達はいつも、名簿の下から探す。大抵、下から3番以内には名前があるからだ。
「あ、咲!また一緒!」
「わ、ホントだ!何組?」
名簿の一番上に目をやる。4組。と、書いてあるその真下。一番上に、見つけてしまった。
アイツの、名前を。
「また一緒じゃん。タッキーと間宮は別か…」
と、真里花が言ったけど。私はもう靴を履き替えていた。
早く、会いたかった。数週間ぶりの、アイツに。
「ちょ、ちょっと待ってよ…!」
真里花の手を引いて、下駄箱を抜ける。角を曲がって、階段を登って。また、角を曲がって。真っ直ぐ廊下を突き抜けて、教室に飛び込んだ。
その瞬間、目が合って。アイツは嬉しそうに微笑った。
「結局同じクラスじゃん!」
「結局同じクラスかよ!」
同時にそう言ったら、真里花が後ろで「アツアツですなあ」と変な口調で冷やかした。
最後の1年も、きっと楽しくなる予感がした。
【おわり】
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