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期末テストの1週間前、ケインが補講について告知したから、私と哀川は間宮くんに勉強を教わることになった。放課後、3人で残って。暗くなるまでみっちり。終わったら、間宮くんが家まで送ってくれた。 そして、数学のテストを翌日に控えた日。 「違うって。この問題の公式はこっち。数学のテスト、明日なんだけど。やる気ある?」 「あります…」 間宮くんは、哀川にだけスパルタだった。 「間宮くん、ここ分かんない…」 「どれ?あ、これ難しいよね…この公式に代入して、この値出して…」 「あ、ホントだ!ありがとう!」 私には、蕩けるように優しい。ホント、恥ずかしくなっちゃうくらい。「これ難しいよね」って。間宮くんなら、簡単にスラスラ解けちゃうはずなのに。 「間宮さん、俺もココ…」 「これ、さっき教えたのと同じだけど、」 「えっ、マジすか、」 「やる気ある?」 「あります…」 すると間宮くんが立ち上がった。 「どこ行くんだよ?」 「飲み物買いに。疲れたんだろ?ちょっと休憩しよう」 優しいな、間宮くん。 「米澤さんは何が良い?」 「オレンジジュース、」 間宮くんが出て行くと、教室は気まずい沈黙に包まれた。 静かになったから、思い出してしまった。体育祭の放課後、間宮くんを待つために向かった下駄箱で。 五十嵐さんと、哀川の姿。 彼女は恥ずかしそうにモジモジしてて、哀川は宥めるみたいに微笑い掛けてて。カップルみたいに見えた。 それで、傷付いてしまった。私の彼氏は、間宮くんなのに。
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