21人が本棚に入れています
本棚に追加
小学校時代は身体も弱く、学校も休み勝ちだったが
いたずら好きで、見知らぬオヤジに額を勝ち割られたこともある。
(今考えても俺が悪かったが、今の俺ならそのオヤジを暴行障害で刑事告訴するであろう)
徐々に身体が丈夫になり、中高一貫の入試には間に合わなかったが、
高校から開国高校に入るという快挙の序章と思えば悪くない。
「そういえばさ」
さきほどの哀れな高校生がまた喋り始めた。
聞くとも無く、耳に入ってくるのだから仕方あるまい。
「吉田の兄ちゃん、カブで一晩でめちゃくちゃに儲けたらしいって!すげーよな!」
「すげー!信じられない!」
「な、ほんとに信じられないよな!」
「あんな小さな野菜で、どうやって儲けたんだろう?新種とか?」
「な?冬しかとれないのにな!」
俺は、名もない花には名前をつけるだのなんだのという歌が今ひとつ理解できないのだが
おそらく、彼らの疑問とはまた別の問題だろう。
「あなたにとって名前の無いように見えるその花には、きっとすでに学名がつけられていることでしょう」ということだ。本当に新種かも知れないが、おそらく、発見しただけでは巨万の富は得られまい。
彼らの言う、新種のカブとは、仮想通過か従来の株取引か、どちらかだろうから。
やはり、哀れ極まりない会話だ。
関係ないが、何億光年は距離の単位だから、
何光年も歌いながら君を待ったり、その間に起きた物語を語るのはおかしい。
と、前にクラスメイトに言ったところ、多くの賛同の声があがったが、
そもそもフィクションなのだから、そのあたりはぼんやりと楽しむのも一興、
との少数意見も出た。
「10メートルでも100キロメートルでも君を待つよ。」というのもシュールだ。
「君が1km眠っていた間のできごとを話す」凡人の俺には思いつかない。
最初のコメントを投稿しよう!