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『この人、意外と笑いじょうごなのね‥‥。』
祥己は思った。
「ところで亜紀‥‥どうしてお前、こんな所にいるんだ?まさか、仕事でもあるまい?」
「いや、仕事だ。依頼人が、ここに入院してるんでね‥‥。」
さっきとは打って変わって、冷静な態度で答えている。
「この病棟にか?」
「ああ‥‥。」
ジッと孝彦達を見据える先で、亜紀は言葉をそのまま沈黙へと伏した。
「岡本君。」
「わかってる。亜紀、急いでるんだ。また後でな‥‥ 。」
祥己のさいそくで、ようやく歩みを進めた孝彦。
目の前を通り過ぎてゆく、そんな後ろ姿を見つめながら、亜紀は再び壁へともたれかかった。
「晃に‥‥孝彦‥‥か。」
警察官を傍らに、病室の中へと消え去ってゆく彼らの姿を見届けながら、呟き様、押し黙った亜紀の眼差し。
「まさか、あいつら二人が関わってくるとはな‥‥。」
だが次の瞬間、その口元に不敵な笑みが浮かんでいた。
「さて‥‥。これからが、ゲームの始まりだ‥‥。」
そう、今まさに彼らの周りで何かが動き出そうとしていたのである。
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