209人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
問い正しながら、晃はソファ傍らのガラスケースへと視線を向ける。
「へえっ~。これ、なかなかいけるじゃん。お前、いつもこんなの飲んでんの?」
差し出されたグラスを手に、晃は深いため息と共に頭を抱えていた。
「お前の気持ち、よく分かるよ‥‥。」
亜紀がゆっくりと味わいながら、グラスをかかげ晃へと呟いている。
「えっ?何がわかるって?」
さっきからもう三杯目を口にしている孝彦に、今さら説明した所でどうにもならない事はよく分かっていた。
このウイスキーが値段もつけられない程、高価なもので、晃の父親の預かりものだなんて‥‥。
「無駄な事だな‥‥。」
完全にあきらめたのか、手にしたグラスの中身をおしげもなく晃は一気に飲み干した。
そう、孝彦はこの事実を何も知らない。
そして、陽気な彼は何も気にしないのだ、そんな事は‥‥。
最初のコメントを投稿しよう!