第3話

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そして、そんな出来事の直後であるにも関わらず、再び我に返った瞬間には、あの月の輝く浜辺の岩壁に瑠依はたった一人、立ち尽くしていたのだった。 「まただ‥‥、私、そう思った。また自分の呪われた力に振り回されたって‥‥。」 「その少女は、幽霊だったって訳だ‥‥。」 瑠依に代わって、亜紀が結論を出している。 「だが、なぜその少女が原因だと思うんだ?」 「次の日、またあの少女を見たの‥‥。昼間、中心街をバイクで走ってて‥‥。偶然、信号で止まった交差点で、今度は喫茶店のウインドウ越しに‥‥。」 唯一、車越しに顔を会わせた、あの中年男性が誰かとテーブルで話し込んでいた。 そして、その傍らには、あの少女が立っていたのだ。 「悲しそうな瞳で、私をじっと見つめてた。その直後、突然身体の芯が凍りつくかのような感覚に襲われて‥‥。ウインドウ越しに、確かに誰かと目があったような気がしたんだけど‥‥。その数時間後、最初の接触事故に巻き込まれたの。」 座り込んでいる瑠依を前に、亜紀は腕組したまま、真剣な眼差しを向けている。 「理由はどうあれ、この世に生きてる相手にとっては、見られて困るものを見てしまったのは事実のようだ。」 呟き様、亜紀の促した視線の先が、瑠依を左隣へと引きつけた。 「君が彼女に助けを求めたんだね。一体、何の為に?」 瑠依の瞳に映ったもの。 長い黒髪、透き通るような白い肌、そして、まだ幼さの残る横顔‥‥。 それは深い記憶の片隅にうずもれていた、あの少女の亡霊の姿、まさにそのものだった。
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