美しき月曜日

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美しき月曜日

「おはようございまーす!」 ドアを勢いよくあけてホリイちゃんが入ってきた。 栗色の髪を内側にくるりんと巻き込み、ばっちりメイク。小さめの目にもマスカラたっぷり。白のふわふわセーターに赤地にタータンチェックのミニスカート。ニーハイブーツ。彼女が入ってくると事務所がぱっと明るくなる。とりあえずその格好が法律事務員にふさわしいかは置いておく。 「おはよう」 わたしは先輩らしく穏やかな微笑みを返した。 「ホリイちゃん、金曜日どうだった?」 「きいてくださーい!」 明るく甲高い声が静かな室内に響く。 「おっと、その前にコーヒーを淹れさせて」 わたしは、自分のマグカップに飲み物を用意しながら席につき、パソコンを立ち上げる。ホリイちゃんはペットボトルの水だ。美容のために1日2リットルの水を飲むというあれを彼女は頑なに続けていた。  冬の朝の白い光がブラインドの隙間から差し込み、白い壁にかけられたシャガールのリトグラフの紺とオレンジが冴え返る。完璧だ。月曜日の朝というのはこうでなくてはならない。決して耳障りな弁護士の罵声やひっきりなしにかかってくる電話などがあってはならない。  弁護士ふたりは横浜と東京地裁で法廷だ。昼まで戻ってこない。  わたしのようなベテラン事務員になると、弁護士を朝10時と午後3時には事務所にいないようにスケジューリングすることも、書面を作りながら全く別の話をすることも、ゆで卵の殻をきれいに剥くことよりもずっと簡単なことなのだ。  わたしはコーヒーの芳醇な香りを堪能し、一口飲むと、菩薩のような微笑みを浮かべて言った。 「それで首尾はどうだった?」
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