1 心残りのある少女の話

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 自分のバイトのチェックでもしようと、部屋へ戻ろうとした俺の背中へかかる声。それ、脱ぎ散らかしながら走ってった先輩に言われたくないっす。これまた慌ただしく戻ってきた先輩は、黒いローブに着替えて、鎌とスマホを持ちフードを被る。紛うことなき死神になった所で、3本指を立ててポーズを決めた。 「それじゃあ、行ってくるね!今日もボクの仕事を少し振り分けといたから、よろしく!」 「もうチェック済みです。分かってるから、早く行ってください…」 「おおう!ミーティング始まってる時間だ!やばいやばい!いってきまーす!」  騒がしく出て行った先輩を見送り、やっと静かになった部屋にため息を吐く。あの人、なんであんなんで主任になれたんだろう。主任って簡単なれるものなのか?本当に謎。  自分の出の時間もあと少しと迫ってきてるし、さっさと準備を始めよう。クローゼットから出してきた黒スーツを着込み、白手袋をして、骸骨のフルフェイスマスクを被る。先輩は骸骨だけど、俺は生前のままの姿なので、見た目はしっかり人間だ。流石にこのまま現れるのはまずいらしく、バイトをする時はこれ被ってね☆と初日に渡された。被るとマジで骸骨頭になる上に、視界も変わらないし、息苦しくもないので快適だ。ちなみに、主任にならなきゃローブと鎌は持てないらしい。  準備が終わり、何も無い目の前の空間に鍵を差し込めば、ドアが現れる。ドアノブ上に埋め込まれてる液晶へ、指定通りの座標を入力。     
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