4 愛が欲しかった女の話

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 ここまで騒いでいればすぐに警備にバレるのも当然で、見た事のある騎士を先頭にして数人のモブっぽい騎士と、あの婚約者の男が駆けつけてくる。放せと叫び続ける女を狩人に代わりモブ騎士が取り押さえ、見た事のある騎士は姉の方へと駆け寄る。  応急処置は施したとか、ご無事でしたかとか、遅くなり申し訳ございませんとか…完全姉贔屓な雰囲気に、叫んでいた女の様子が変わる。ぴたりと動きを止めると、騎士を睨み付ける。その目があまりにも暗すぎて恐怖を覚えた。 『…裏切ったの?わたくしを、裏切ったのですか、イルザーク…』 『裏切ってはおりませんよ、姫。私の職務は王族の方々に、安心して日々を過ごして頂くよう警備をする事ですので』 『謀った…最初から謀っていたのね…セドリック、まさか貴方も…』 『え?!あ、いや、私は、その…』  話を振られた婚約者の男は突然慌て出し、逃げようと後ずさるが、既に後ろにもモブ騎士が控えて居て取り押さえられる。そうすれば、違うと婚約者は叫びだした。 『私が本当に愛しているのは、第一皇女だ…!第二皇女に誑かされて!私だって被害者だ…!!』  なんだこの昼ドラ展開…騒ぎたてる婚約者の男と、項垂れる女。これで一件落着だけど、俺の仕事は死んだ女を連れてく事なわけで…ここでも死なないとなると、一体どこになるんだろう。終わりの見えない長期戦にげんなりして溜息をついた所で、女の様子がおかしい事に気付いた。     
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