4 愛が欲しかった女の話

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 俯いたまま何かをずっと呟いているのは良いんだけど、問題は女の周りに黒いモヤが集まっていることだ。背中から溢れ出る黒い物は、モヤを通り越して煙みたいになっている。 『許さない…許サナい…』  女から出てるとは思えない低くしゃがれた声が聞こえ始め、体は黒い煙に覆われていく。視覚的な異変には気づかないけど、流石に声と様子がおかしい事は生者でも分かるだろう。一番近くで取り押さえていたモブ騎士たちが最初に気付き声を掛けると、女は顔上げた。  既に獣のような姿へと変化していっていて、人間の面影がなくなってきている。それに驚いたのは俺も同じで、モブ騎士と似たような悲鳴を上げた。  なんで?魔落ちって死んでからするんじゃなかったのか…?なんで生きてる状態であんな事になってるんだ…? 『化け物だ…!』  ブチブチと音を上げながら変形していく姿に恐怖し、逃げようとするモブ騎士へ、女だった生き物の爪が襲いかかる。簡単に吹き飛ばされ、見事な庭へ血しぶきが広がった。突然の魔落ちに騎士たちが剣を抜き、応戦体制をとる。獣のような姿に変った女は、大きく咆哮を上げた。 「何デ…!!何で、イツも、お姉様が、必要トされるの…?!」 『既にあれは魔物へと墜ち果てた!怯むな!』  言葉が通じないのか…?     
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