5 大変なことになった話*

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 覗き込んできた顔を思い切り睨み付けてやったけど、骸骨マスクのお陰でそこまでの表情は読み取れないだろう。それでも、溢れ出る不機嫌な雰囲気を汲み取った賢者は、軽い調子で謝りながら肩を叩いてきた。  最近は先輩か一度きりの他人としか接していなかったから、自分の事を知ってる人と話すって言うのが凄く久しぶりで、馴れ馴れしい態度が少し嬉しかったりもしたけど…口に出したら調子に乗りそうなので黙っとく。下で繰り広げられてる戦闘には一度も視線を向けず、俺と賢者はドアを潜った。  通い慣れた、白く静かな廊下を2人並んで歩くのは少し不思議な感覚だ。何が楽しいのか分からないけど、やたらとご機嫌な賢者へ視線を向ける。ジロジロと遠慮せず見てたら、流石に何?と苦笑された。 「お前、生きてる時より生き生きしてるな」 「そう?まあ、あの世界で生きてる方が地獄だし」 「……なんで死んだのに生き返ってんの?」 「俺のパーティリーダー勇者だから」 「……はぁ?」 「勇者だから」  真面目に答えられてるのか、からかわれてるのか分からない…勇者だからなんだって言うんだ。蘇生でもできるのかよ。     
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