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何回か同じやりとりを繰り返して、やけくそでそう言ったら、素直にそうだと頷かれた。勇者っていう選ばれし者が教会でなんかよく分らん魔法を使うと、仲間のみ蘇生するらしい。どんな原理知らないけど、生きているのを目の当たりにすれば、そんな奇跡の力もあるんだなって納得するしかないけど…そんなゲームみたいな世界で大丈夫なのか心配になる。
蘇生可能だと知ると、死んでも仲間の反応は薄いのも、死神に驚かないのも当然だ。俺が担当してた時以外でも何回か死んでるんだろうし。そうだ、こいつは何度も死神と接してきてるんだよ…俺を指名してるって先輩が言って対象者を交換したけど…もしかして…
「…俺以降で担当した死神に、俺の話した?」
「ああ、したよ」
「…指名もした?」
「どうせなら、知り合いの方が良いし」
「……死神指定してくるの、きっとお前が初めてだな」
「違いない。普通1回しか死なないしね」
気にすることもなく笑う賢者に釣られ、俺も小さくだけど笑ってしまう。前回よりも和やかな雰囲気で、雑談しながら待機室が並ぶ廊下までやってくれば、もう終わりも近い。先輩も優しくて楽しいんだけど、賢者とは友達と話してる感覚に近い。こんなどーでもいい会話が出来たはすごく久しぶりで、少し寂しい気もする。
待機室のドアを開けて、中に賢者を入れてすぐに閉められなかったのはそんな理由だった。俺の様子に気づいた賢者はニヤニヤとタチの悪い笑顔を浮かべた。
「どうしたの、俺と離れるのが寂しい?」
「な…っ!」
「茶でもいれてあげようか?」
「い、いらない…!」
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