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掛かると思った瞬間に目を瞑ったせいで、次に目を開けると、既に廊下には俺と賢者しか居なかった。派手な金属音と絶叫は聞こえたから、引きずられて行ったのだけは何となく分かった。
次が無いのが分かれば、とにかくこの気持ち悪さをどうにかしたい。手で払ってもなかなか落ちない液体と格闘していると、賢者が溜息を付きながら俺から離れる。助けてくれたとは言え、もっと心配するとか無いのかよ…八つ当たりに近い状態で賢者を見ると、何とも言えない表情を浮かべていた。
「あー…シャワー貸すから、とりあえず中入って」
「え…」
いきなりの提案に驚く。今日のバイトはこれで終わりだし、部屋に帰って浴びても遅く無いけど…今すぐここで落とせるのは魅力的だ。実際、マスクに染み込んできたヌメヌメが素肌に触れていて、我慢出来ない程に気持ち悪いし、なんか息も苦しくなってきた。ここは甘えさせてもらおうか…?
まごついていた俺に痺れを切らしたのか、賢者はもう!と大きく叫ぶと力づくで部屋に引っ張り混んできた。大きな音を立てて閉められたドアと続いて聞こえる鍵の音。何もしてないのに鍵閉まるなんて、この部屋オートロックだったのか。
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