6 わけの分からない感情の話

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 俺に会うためだけに死んだってのが、じわじわと恥ずかしくなってきて、視線から逃げるように背中を向けた。マスクのお陰で隠されているけど、絶対に俺の顔赤くなってる。しおらしい賢者の態度のせいもあって、調子狂うなぁ…  白い廊下までくれば、魔落ちが襲ってくることはない。安全地帯までやってきたから、これで周りを気にすることもなく話はできるだろう。それなのに、真ん中で突っ立っている賢者は、床を見つめたまま動こうとしない。淫魔のせいもあったけど、犯されたの俺の方なんだけど…そんな思いつめた顔をされても、どう接して良いのか困る。 「お、おーい…?」  なんとか出た声に反応した賢者は、勢いよく顔をあげると、苦笑を浮かべながら悪いと口にした。  前回とは違って、お互い無言のまま廊下を歩き始めた。賢者と一緒に居るってのに、静かな廊下に足音だけが響くのは不思議な感覚だ。他の奴とでも、いつもは啜り泣く声の一つぐらい聞こえてくるし…。  話したいと言っていたわりにはだんまりな賢者に、気まずさを覚えながら歩き続ければ、すぐに待機室が並ぶ場所まで辿り着いてしまう。部屋番号を確認するために、タブレットを起動した俺に合わせ、賢者も止まる。くるくる回るアイコンを眺めていたら、やっと賢者が口を開いた。 「あの、さ…」 「…ん?」 「その…この前は、悪かった」  ぐっ、やっぱりその話題か…!恥ずかしいから無かったことにして欲しいレベルなんだけど…     
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