6 わけの分からない感情の話

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「…おう」  恥ずかしさと戦いながらも、それだけ返す。何か続けて言おうとした賢者だったけど、これ以上傷口を抉られたく無いと言う一心で、被せるように行こう!と声をあげた。  思ったよりもテンパって裏返った声だったけど、俺がこれ以上この話題をして欲しくないと言うのは察してくれたようで、賢者は何か言いたそうな顔をしながらも頷いてくれた。今回指定された待機室はだいぶ先の部屋だ。無言で歩く距離としては少し辛い。俺の一歩後ろを付いてくる賢者を気にしながら歩き出した時だった。  突然、ビービービー!と言うけたたましい警報音が廊下全体に鳴り響いた。続いて、天井から赤色灯が現れ、点灯を始める。  真っ白だった廊下は真っ赤にチカチカと光り、一気に非常事態の雰囲気に包まれた。 「な、なんだ?!」  驚いて辺りを見回して見るけど、音と光以外に異常は無い。それでも、赤い警報のせいで早く逃げなければと言う気持ちにさせられる。どうしたら良いのか分からなくて、助けを求めるように賢者を見たけど、同じように首を傾げて当たり前だけど答えをくれそうにはない。 「緊急事態発生、緊急事態発生。討伐科は、直ちに待機室第45区画へ向かって下さい」     
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