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逃げなきゃやばいなんて、言われなくても分かってる!もうQ&Aなんかも見てられない!!タブレットを小脇に挟み、呆然と獣を見上げていた賢者の腕を掴むと一目散に走り出した。
「ちょっと、なんでこんな所にあんなのが?!」
「俺だって知らない!!」
後ろで叫ぶ賢者に、前を向いたまま叫び返す。大きい雄叫びと一緒に、足音と火傷しそうなぐらいの熱波が近付いてるのを感じるだけで、あの獣が追ってきてるのは把握できた。
「えぇ?!追ってきてるって!!」
「わざわざ実況ありがとう!!!」
ここで死ぬわけにはいかない。自分のためにも、賢者のためにも、なんとか逃げ切らなきゃいけない…!だけど、四足の獣と二足の人間とじゃ速さの違いはありすぎて、簡単に追い詰められて行く。もうすぐ収容予定の部屋の前に到着する…その前に、なんとか獣の注意を逸らしてから部屋の中に逃げ込みたい。
わふっと犬のような鳴き方をドスの効いた声で叫びながら走る獣は、間落ちした獣じゃない。禍々しい感じが一切感じられないし…どこかで経験したことのある懐かしい感覚だ。…そう、小学校の時、めちゃくちゃでかいラブラドールレトリバーに追いかけ回された、あの感じに似ている。一か八か…!賢者の手を離すと立ち止まった。
「何やってんの?!」
「5063号まで走れ!!」
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