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もう駄目だ、顔見てらんない。恥ずかしさで死にそうだ。賢者の視線から逃げるように枕へ顔を埋めた俺のせいで、会話が途切れる。事故だと片付けてたのに、まさか本気で抱いたなんて言われて恥ずかしくないわけがない。しかも、それが信じられないぐらい気持ち良かったって言うプラスな感想しか無くて…悔しい…。
「…そっか。俺、お前の事結構好きだからさ、安心した」
「え…」
聞き捨てならないセリフに驚いて顔を上げる。もう一度振り返ると、逆光気味だけどすごく嬉しそうに笑う賢者の顔があった。
「有難う、カナト」
「お、おう…」
な、なんだよその顔…?!
急に心臓が締め付けられるような痛さを感じて、間抜けな返事を返した気がする。まさか、そんな…相手は男なのに…一気に顔が赤くなるのを感じる。それを見てなのか、優しく微笑む賢者の顔が近付いてくるのに、なぜだか動けない。
キスされる…!そう思って、慌てて目を固く閉じたけど、唇には感触が全くなくて…代わりに、額に柔らかさを感じた。
「大丈夫、今日は襲わないよ」
デコをくっ付け、至近距離で賢者が微笑む。
な、なんだこれ…イケメン過ぎて…ずるいだろう…!?わけの分からない胸の痛みが、更に強くなった気がした。
(わけの分からない感情の話)
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