7 心配性な猫の話

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 先輩用に残ってたから揚げを奪い取ると、一口で口の中へ突っ込む。ポカンと俺の事を見つめていた先輩は、しばらくすると噴き出すように笑い出した。なるべく笑いを抑えようと、両手を口に当ててる所が、更にイラっとさせる。笑ってんじゃねー!!俺は逃げるように食器を纏めて、流し台へと駆け込むしかできなかった。  ◆  対象者が動物って言うのは今回が初めてだった。魔落ちした獣とかじゃなくて、本当に動物。ペットの猫。  ただ、普通の猫じゃなくて、100年以上生きた化け猫って所で妙に納得できた。魔性を宿した猫に目を付けたのが魔王で、人間を襲う魔物に変えてしまったらしい。魔獣化で理性を無くし村を襲った時に、タイミング良く通りかかったのが勇者達。退治して、普通の状態の魂になった今、俺が迎えに行くっていう流れ。  ドアを開けると、夜の森の中だった。近くに門と篝火が見えるから、村かなんかの近くなのかもしれない。明かりの向こうからは楽しげな音楽が聞こえてくるのに、こちらへ背を向けて座っている白い猫は、じっと暗がりを見つめていた。なんて声をかけるべきなのか…と言うより人間の言葉が通じるのか?悩んでいると、何か崩れる音が聞こえて驚く。暗がりの向こう、茂みの近くで男が何かを蹴っていた。 『めて、やめて、お父さん…!』 『ふざけるな、何を考えてるんだお前は!』     
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