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「でも、企画意図をお伝えする書類の用意が終わっていなくて」 「それくらい他の社員でもできるから。宮脇さん!」 ふいに名前を呼ばれて、香澄はびくっと肩を揺らして、50代後半の部長の顔を見た。 ほぼ子育てを終えたかつてのコツレサマは、にっこりと慈母のような笑みを浮かべて香澄を見た。 「ベテランの宮脇さんなら、企画書見ればいけるでしょう?」 「は、ぃ……」 返事はほぼ泣き出したオコの声にかき消され、香澄はあいまいな笑みで部長に頷いて見せた。 でもすでに部長は「あらあら」と目尻を下げて、香澄の顔から紗英の腕の中へと視線を移してしまっている。 それを合図にしたように部長のデスク周りに集まっていた社員たちはそれぞれ自分のデスクに戻り、数人の女性社員ばかりが紗英を中心に残っていた。 「コツレサマになって日も浅いでしょ? なんでも聞いて」 「そうそう、もし必要ならお下がりとかあるわ」 「うちもオコの時はけっこう体弱くて、いろいろとコツレサマ協会にお世話になったんですよー。今度、よさげな情報伝えますね」 「宝田さん、出産祝金、自治体から届いてます? 届いてなければ会社から催促もできるから言ってくださいね。他にも月誕生祝金も1歳まではもらえるから」     
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