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動悸がおさまった頃にようやく胸を撫で下ろし、香澄は改めて向かいの公園、木の陰になったベンチに座った。
そして彼女たちの死角になるところで背を丸めるようにしてそっとお弁当の包を開いた。
中には、コンビニの割引になったおにぎりをわざわざラップに包み直したものと、昨晩の揚げ物の残りが入っている。
ラップのおにぎりを手にした時だった。
「あ、宮脇さん」
香澄が顔をあげると、ベンチの前にりかがファーストフードの紙袋を片手に立っていた。
中途採用で入ってきた同世代の市村りか。
今まで紗英とよくランチしていたため、香澄とはよく話す相手ではなかったが、いつもおっとりと仕事をこなしている。
「お昼、一緒してもいい? あたしもちょうど買ってきたところなの」
軽く片手の紙袋をあげたりかに、香澄は「もちろん」と隣を開けた。
「あ、宝田さんが専用カフェにいるー」
りかは向かいの店のテーブルでランチをしている紗英の姿を見ながら座った。
「あそこって、ほんとコツレサマしか入れないのかな。同伴にウマズメじゃだめなのかなあ」
りかが何気なく発した単語に一瞬だけ香澄の肩が揺れた。
それに気づくこともなく、りかはのんびりと袋からビッグサイズのポテトをとりだした。
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