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「そ、そう。いいの? コツレサマになれば、国や自治体の補助金でほとんど生活まかなえるし、会社でだって出世しやすくなる。買い物だって美術館だって、優待制度をすごく受けられるのに? なによりコツレサマってだけで、すごく名誉なことなのに?」 恐怖に駆られるようにして言葉を畳み掛けた香澄に、りかはふはっと鼻と口両方から息が抜けたような笑いを見せた。 「うーん、やっぱりおかしいかなあ」 「おかしいも何も、そんなの周りに知られたら、よけい職場での扱いもひどくなる。それでなくても市村さん、残業させられてばっかりじゃない。国に貢献できないって……人によっては一人前でさえないって、そんなふうに陰口叩かれるの、知ってるでしょ?」 声を潜めながら、香澄は背筋に冷たいものが走るのを感じてりかに向き直った。 「そうね。でも昔から陰口言われる時は言われるし、気にしないことにしてる」 「そういうことじゃなくて。ウ……だからそれを国が排除しようとしてるの。コツレサマだってもともと国の啓蒙から始まってるの。今じゃ社会スタイル、社会システムとして定着してるからあまり気にしてないけど。でもその意味分かる? コツレサマになれなければ死ぬってことよ?」 「ええ? 別に命とられるわけでもないし」 「社会的に認めてもらえなくなったら死ぬのと同じでしょ?」 「おおげさだよ。それにあたし、残業も平気だよ?」 「そういうことじゃなくて」     
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