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言い募る香澄に、りかは少し太めの眉を下げて香澄をじっと見た。
「宮脇さん、あたし、強がってるとかじゃなく、今の状態があたしにとってはいいの。子どもはいないけど、仕事でも家庭でも趣味でも、誰かの役に立ててるんだって分かるだけで、十分なんだよね。夫とあわせれば食べていけないわけじゃないし、第一子ども苦手だし」
「好きとか嫌いとかじゃないの。コツレサマにならないと、」
そこまで言いかけて、香澄は言葉に詰まった。
不思議そうにりかが香澄を見つめている。
コツレサマにならないと、の次の言葉を、香澄は何と言おうとしたのか。
それを言うには、ひどく香澄の自尊心を傷つけられるような気がした。
「……専用カフェのことを不公平って思うなら、やっぱりコツレサマになるのがいいんじゃないかな。だって、これはもうどうしようもないわけだし……」
「でも、子どもが好きじゃないって分かってるあたしのところに、コツレサマになりたいからって理由だけでこさせちゃったら、子どもに悪いってつい思っちゃうんだよね」
ふと考えこむように眉根を寄せたりかの隣で、香澄もまた口を噤んだ。
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