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古いアルミサッシの窓がカタカタと鳴って、隙間からわずかに風が入ってきたらしい。
かすかにレースのカーテンが揺れているのから目を逸らして、香澄は窓の方を見やった。
築40年も過ぎたマンションなら、どこかしら綻びていても仕方ない。
確か秋から壁の修繕が始まると通達が来ていた。
香澄の体と同じで、いつもどこかしらメンテナンスを必要としている。
メンテナンスといえば、少しずつ生理が不順になっていることを思い出す。
そうやって気が逸れたのも、体の熱が少しずつ冷め、集中できていないせいだ。
そう思った瞬間、のしかかる陽馬の手が顎を掴んで無理に正面を向かせられた。
軽い苛立ちを見せる瞳が香澄の考えを覗き込むように射抜いた。
ごめん、とつぶやこうとした口を乱暴に陽馬が塞いで、同時に香澄の腰に陽馬が自分の腰を強く打ちつけた。
陽馬が腰の動きと、香澄の口をねぶる舌の動きを連動させるように激しくするほどに、香澄はどこかで冷めていく自分から目を逸らした。
逸らさなければ、儀式はより虚しさを増す。
そうなれば、自分がなぜ儀式をしているのか、その意義さえ見失ってしまいそうだった。
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