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その分はかどらない業務が香澄やりかに回ってきていた。
「香澄さん、もう遅いかもだけど、オレ、香澄さんの種馬でいいよ」
マグカップに口をつけた香澄の動きが一瞬とまった。
その香澄ににじり寄るようにして、陽馬は香澄の肩に触れた。
「第二でも第三でも儀式に協力する。正式なパートナーでなくても、そのパートナーとできない時に呼び出してくれてもいいし、オレにできることなら香澄さんがコツレサマになれるよう協力する」
「……なんで? 急にどうしたの?」
香澄は息を長く吐き出してから、ようやく陽馬の顔を見た。
陽馬は哀しそうな目で香澄を見ている。
「……同情してるの? 私がもう高齢出産の域にかかりつつあって後がないから」
「香澄さん」
「だって自分でも分かる。少しずつ生理が細くなってて、そう遠くないうちに閉経するかもしれない。後が、もう、ない」
香澄は泣き出しそうな顔を慌てて俯かせた。
泣いたら、何もかも、頑張れなくなるような気がした。
その瞬間、陽馬が香澄の肩を抱き寄せた。
「オレ、ずっと考えてた。香澄さんがそうしたいならパートナー解約も受け止める。でも香澄さんがバンクのパートナーと過ごさない時間は、オレとともにいてほしいんだ」
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