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陽馬の言う意味がいまいち分からず、香澄は戸惑ったように陽馬を見た。
「そばにいたいんだ。儀式とか関係なく、香澄さんの」
香澄が驚いたように息を飲んだ。
「それを言いたくて、今日来たんだ。もし香澄さんが望むならオレ、バンクを脱退してもいい。もちろん、また正式なパートナーに戻してくれるならもっといいけど」
少し淋しそうに笑いながら、陽馬は香澄を離した。
「でもコツレサマになれなかった女とパートナーになれば、陽馬、あなたもいろいろ嫌な思いをするかもしれないのよ? それでもいいの?」
「そうかもしれないけど、2人でなら乗り越えられる気がするよ。オレは、香澄さんがコツレサマでもそうでなくてもいいんだ。香澄さんは香澄さんだから」
どくん、と大きく心臓が跳ねたような気がして、香澄は思わず胸をおさえた。
陽馬がとてつもなく大事なことを言ったような気がして、でも香澄にはそれがはっきりと何かが分からない。
「……1週間待つから考えてみて」
そう言って陽馬は出した珈琲に口もつけずに立ち上がった。
香澄は呆然としたまま陽馬の動きを目で追った。
何かが胸を迫り上がってくる。
聞かないとならない。
「コツレサマになれない私は、……私、は、一人前の、女でも、ない、それでも?」
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