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その場で見上げる香澄に、陽馬が振り返った。
「もちろん。オレにとって香澄さんは、コツレサマだろうとなかろうと、一人前の大事な女の人。だから、」
「な、なんで? だって私、いつも儀式の時ばかりしか」
玄関に向かいかけた陽馬が踵を返して、香澄の前に片膝をついた。
「そんなことない。オレ、香澄さんのこと好きだっていつも言ってきた。それ、バンクのパートナーだからとかじゃなく、香澄さんだからだよ。儀式の間にいろんな話をして、いろんな時間を過ごさせてもらった。その中で、オレはやっぱり香澄さんがいいんだ。コツレサマとか一人前とか、そういうこと以前に」
香澄を見つめる陽馬の瞳は穏やかだ。
それを見た瞬間に、香澄は堪えきれないようにラグの上に蹲って泣き出した。
陽馬が慌てて香澄をなだめるように、香澄の背中を撫でる。
その手のぬくもりを、香澄はどう受け止めたらいいのか分からないまま泣きじゃくっていた。
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