コツレサマ。

４

りかの言う通り、陽馬の手をとればコツレサマになるという以外の幸せがあったかもしれない。
でも、香澄にはその手をとれなかった。
ずっとコツレサマになることだけを目標にしてイメージトレーニングばかりしてきた香澄には、他の方法を想像することができなかった。

スマホが震えて、香澄はサプリを飲み込みながら画面をタップした。
豪士から第二の儀式の日程についての問い合わせだ。
プレで会った時はパートナー申請をとりやめようと思ったのに、今は正式なパートナー契約を結んでいる。
香澄との出生確率リストでも、陽馬の名前が消えて一番上に名前が載っている。
あいかわらず無神経に香澄の神経を逆なでするようなセリフも吐くけれど、それでも豪士の無頓着さや屈託のなさは少しだけ香澄の気を楽にした。
「できる時はできるんだしさー」とどうでもいいことのように言うのだけは毎回いらつかせはするものの。

でも契約を結んで間もなく、第二の儀式に早々と同意してくれたのも豪士だけかもしれない。
そのことを意外だと伝えた時、豪士はいつものように思ったそばから言葉にするのではなく、少し慎重に言葉を選んで言った。