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言いながら、頭の中で第二の儀式である人工授精の費用のことを思って憂鬱になる。 結果が出れば自治体から全額補助が出るけれど、出なければ高額な医療費として請求がくる。 香澄には経済的に余裕があるわけではないから、そう何度も行える儀式ではない。 それでも、もう猶予はない。 ステップアップしたって、だめな時はだめなのだ。 「オレ、香澄さんが好きだから、コツレサマになるの協力しようと思った。でももう無理。香澄さんにとってオレって、種馬でしかないの?」 すばやく服を着て、裸のままの香澄を残して陽馬は6畳の部屋を出ていった。 キッチンの脇にある玄関のドアがきしんだ音をたてて閉まったのが聞こえた。 香澄は大きくため息をついた。 苛立ちまぎれに、放り出された枕に拳を叩きつけた。 かすかに体をよじったせいで、股間のあたりがかすかに引きつれて、異物を挿入している嫌な感覚が蘇った。 今年40歳になる香澄の体は女としての期限が迫っている。 でも28歳で異性である陽馬には、その切迫感など分かるわけがない。伝えようもない。 もう後がないのだ。 種馬だろうとなんだろうと、香澄がコツレサマになるため必要なものは必要だった。 香澄は立ち上がるとスマホを手にして、国が運営する精子提供者バンクのホームページにアクセスした。     
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