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趣味や価値観、ライフスタイルや経済観念、居住地や仕事、遺伝子の近似性などさまざまな観点からA.Iによって算出された、異性の名前がずらりと並ぶ。
そのリストの名前の頭には数字が昇順に並んでいる。
香澄との間に子どもが生まれる確率だ。
その数値やプロフィールを検討し、会ってみて相性が良ければ正式にパートナー契約を結ぶ。
パートナーといっても生活をともにするわけではなく、いわゆる子どもを産むための肉体的なパートナーだ。
香澄はバンクに登録する男性とのマッチングを通じて、コツレサマになるための儀式を繰り返してきた。
その期間、ほぼ8年。
なのにまだ香澄には、コツレサマへの第一歩となる、卵と精子の出会った結晶ミシルシさえ現れない。
香澄はリストの一番上を見つめた。
新藤陽馬の名前があり、68の数値が瞬いている。
数値として決して悪くはない。
もう1年以上、陽馬とは排卵予定日をめどに儀式を繰り返してきたのに。
ため息をついて、リストの一番上にあがっていた陽馬の名前をクリックして、削除しようとゴミ箱アイコンをタップした。
「香澄さんって本当にアラフォー?」
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