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何を隠そう、ワタシは史上最高の天才である。
自他ともに認める天才。
人々は、私の視線1つで歓喜する。
「やっぱり、頭がいいね。」
「見るからに聡明な顔してる。」
実際、やろうと思えばなんでもできる。
ビッグバン誕生によるリチウム減少の矛盾だって、ここに加速器があれば3日で説明できてしまうのだけど、それはワタシにとって重要じゃない。
再生可能エネルギーで人類の生活を全て賄えるだけのプランも、実はもう頭の中で完成。実験的にも成功したけれど、時すでに遅しだと思う。
地球はそろそろ、人間ではない生き物の手に、返還されるべきだと思っているからだ。
ワタシは史上最高の天才。
誰かが見ている夢を、脳科学とレーザー技術を用いてホログラム化することも出来るし、生き物から生き物へ、意識を転送することだって可能にした。
魂の存在なんて絵空事。それと同価値のものがあるとすれば、それは大容量記憶デバイスである、脳だ。
意識、記憶、感情。
どこがそれらを司っているのか、脳波パターンの分かったワタシには、全てを単純に処理できた。
ようは、個々の脳から発する周波数を見つければ、共に電子信号として送受信可能であるという事実も解明した。
もちろん、上書きも。
しかし。
ワタシがワタシを心から「天才」と思うのは、このような研究や発見、発明が可能だからではない。
私は、人としてではなく、猫として生きることにしたからだ。
自らを、この美しきしなやかな体へと転送し、自然に感謝し、心穏やかに、人類よりも遥かに短い命で、愛すべき地球を満喫することにしたのだ。
略奪や破壊、汚染、自己満足を繰り返す人間である事を辞めた。
それこそ多角的視点が発達し過ぎてしまい、人類の行く末が既に取り返しのつかない状態であると気付いてしまった「天才ゆえの選択」であると言わざるを得ない。
人々は、私利私欲のために、自らの命の核である地球を、日々蝕んでいる。
…あぁ、それにしても。
猫とはなんて快適な生き物なのだろう。
冬のこたつの、なんと魅力的なことか。
やっと、ご飯の時間になる。
今日の缶詰は、何だろう。
天才のワタシは、そろそろ飼い主に一声掛けて来るとしよう。
~おしまい~
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