御裾分け

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 翌日、Eくんは急な高熱に襲われて一人暮らしの部屋で横になっていた。  歩くとめまいがするほどの状態だったが、食材や薬の買い置きがないEくんは近くのドラッグストアまで出かけることにした。  必死の思いで買い物を終え、ふとドラッグストアの向かいに神社があったことを思い出す。毎年小さな祭りが行われており、Eくんも参拝したことがある場所だ。 「なにせ変なお祈りをされたあとだろ。神頼みって気持ちもあってさ」  藁にもすがる思いで、Eくんは神社に参拝したらしい。お賽銭を投げて、はやくこの症状がよくなりますように熱心に手を合わせた。  一礼をして神社の鳥居をくぐったとき、神社の神主さんに声をかけられた。 「熱心にお祈りしていたし、顔色も悪い。どうかしたのかい?」  問いかけてきた神主さんに、Eくんは昨日会った女性とおかしなお祈りの話をした。すると神主さんが顔をしかめたという。  突然、今日履いている靴は水をかけられた靴と同じものか、と尋ねられた。Eくんが頷くと、神主さんがこっちに来なさいと言った。  神主さんの後をついていくと、手水舎という普段神社を参る前に手を洗う場所に連れていかれた。 「本来はこういう使い方をするものではないのだけれど」  そういって、神主さんは柄杓を使い手水舎の水を掬うと、Eくんの靴の先端に水をかけた。驚くEくんに神主さんは靴を脱ぐように促し、裸足になったEくんは女性に水をかけられた足先にも柄杓で水をかけられたという。  不意に、Eくんは少しだけ身体が楽になったように感じられた。  靴と足先をじっと見つめた神主さんが「もう大丈夫だろう」といって手ぬぐいを貸してくれた。  神主さんが言うには、女性が行ったのはお祈りではなく、おそらく呪いの行為に近いものなのだという。
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