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どんなにツライことがあったって、朝はちゃんと来るんだよね……。
遼ちゃんのホームランは、まるでタイムスリップしたような、遼ちゃんが今あたしと同じ高校生のような、そんな〝錯覚〟をあたしにくれた。
壊れちゃうんじゃないかな、と思うくらいドキドキする心臓。叫びたいくらいに苦しくて、恋しくて、でも、誰にも言えない――。それは、片想いの痛み、みたいだったの。
遼ちゃんが振り切ったバットを持ったまま、打った球の行方を見詰めていた。その姿は――いつもあたしに優しくて痺れるような、甘い言葉を囁いてくれる遼ちゃんではなくて、小学生の時の、夕焼け空の下で会ったあの時の遼ちゃんだったの。
あたしの知らない遼ちゃんになってしまったみたいで、余計にたくさんの不安をあたしの中に生まれさせた。胸が痛くて涙が出てきてしまうくらい悲しかった、あの感覚が蘇ってきて。
頬を刺すような冬の風が吹き抜けて、あたしの心の痛みを大きくした。自然と、ボロボロ涙がこぼれて、冷たくなった手で一生懸命拭っていた。
「ひより!? どしたの!?」
茉奈ちゃんがびっくりしてあたしを見てたけど、あたし、何も言えなくて……。
「やっぱりすごいよねー、平田センセ。ひよりは感動してもすぐ泣いちゃうんだ」
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