何かがおかしい

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 夏奈は倉庫に忍び寄りそっと中を覗いた。  亮が冷凍庫の蓋を開け、中を覗いていた。こちらに背中を向けた亮の表情は見えない。  亮の右手には冷凍ナイフが握られていた。  夏奈は転げるように家へと戻った。布団に潜り込み暴れる心臓を抑える。  まさか、まさか。  それに続く言葉は恐ろしすぎて形にできない。  猛烈な吐き気がこみ上げてきた。口を抑えてトイレに走る。便器に顔を突っ込み嘔吐する。さっき食べた夕飯を残らず吐き出した。  亮が作ってくれた麻婆豆腐。今日は胃が持たれているからと、亮は1口も食べなかった。 「夏奈」  外で亮の声がした。 「夏奈、どうした?大丈夫か?」  夏奈は滲んだ涙を拭った。  やっぱりこいつはデーモン亮だ。ミカエルの仮面を被ったデーモン亮だ。早く殺さないとこっちがやられる。  トイレから出ると心配そうな顔をした亮が立っていた。 「夏奈気分悪いのか?」 「ん、大丈夫、吐いたらスッキリした」  歯を磨いて布団に戻る。亮は念のためと、夏奈の枕元に洗面器と水を入れたグラスを置いた。 「俺も胃の調子が悪いし、胃腸炎かなんかが流行ってんのかなぁ」  もう大丈夫だというのに、亮はずっと夏奈の背中をさすっていた。  その手がいつ夏奈の首に伸びてくるかと、夏奈は朝まで一睡もできなかった。    駅の改札を出たところで蒲田に声をかけられた。 「ああ、やっぱり夏奈さんだ」  追いかけてきた蒲田は屈託のない笑顔を作ってよこす。その笑顔がすぐに消える。 「顔色悪いですけど、大丈夫ですか?」 「ああ、ちょっと寝不足なだけです」  蒲田がここにいるということは亮ももう仕事が終わって家に帰ってきているのだろうか。 「亮も今日はもう仕事が終わって?」  蒲田は亮とは事務所は同じだが、派遣される現場はそのときによって違うのだと応えた。
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