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家に入ろうとして開けっ放しの門に気づく。
何度言っても亮は門を閉めない。
立て付けの悪い門を閉める。
もう2度と帰ってくるな、帰ってこなくていい。
帰ってきたらまた殺すぞ。
「おはようございます、今日も暑いですね」
不意に声をかけられ思わず体が小さく跳ねる。
お隣さんだった。
もう慣れたが相変わらず一般常識とはかけ離れた服装をしている。
今日のテーマは孔雀か何かだろうか。
職業はミステリー作家だと聞いた。
「おたくのナツダイダイ今年もたくさんなってますね?」
「ナツダイダイ?あ、夏みかん」
夏奈は庭を振り返った。
大きな夏みかんの木に黄色い実がたわわになっている。
生垣と同様大した手入れをしなくても毎年食べきれないほどの実がなる。
「後からおすそ分け持って行きますよ」
なんか催促したみたいで悪いわねえ、と孔雀は門の前から動こうとしない。
そればかりか、倉庫の方をじろじろと見ているような気がする。
「あ、あの今は忙しいんで、後から持って行きますんで」
「夏奈さんは働き者だからねぇ、お手を煩わせるのも悪いから、旦那さんでいいわよ」
目的は夏みかんではなく亮か。
なんとか孔雀を追い払い夏奈は家に入る。
それにしてもさっきの孔雀の視線が気になる。
あれは絶対に倉庫の方を見ていた。
そもそも夏みかんがなっているのだって、外からはぱっと見よく分からないはずだ。
孔雀の存在は危険だ。
そもそも職業がミステリー作家というのがよくない。
そうそう近所に作家が住んでいることなんてないだろうに。
庭に亮たち――まだ2人目は殺してないが――を埋めるのは止めたの方がいいかも知れない。
だったら家の中はどうだ?
昔読んだ小説で主人公が畳を剥がして床下に穴を掘る話があった。
ああっ。
夏奈は頭を抱えた。
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