この紛れもない事実

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 もぎたての夏みかんを10個ばかりその中に入れる。  門を出て行く亮の姿を見ながら夏奈は思いついたように、そのあとをつけた。  孔雀の驚く顔をこっそり盗み見てやろうと思ったのだ。  亮が孔雀の玄関のインターホンを鳴らすと孔雀はすぐに顔を出した。  尻餅をついて驚くかと思った孔雀は玄関の外をうかがうような素ぶりを見せる。  夏奈は慌てて物陰に隠れた。  玄関が閉まる音がした。  あれ?  夏奈はそっと顔をのぞかせた。  玄関の扉が閉まっている。  しばらく待っても亮が出てくる気配はない。  家の中に上がり込んだのか?なぜ?  孔雀の家の前をうろついていると、道の向こうで小学生くらいの子どもが夏奈をじっと見ている。  これじゃ不審者だ。  夏奈は家に戻った。  いったいどういうことだ。  亮と孔雀はそんな仲だったか?そんな仲ってなんだ。  だから自分と同じ挨拶を交わす程度か、それ以下の仲っだったはずだ。  亮はなかなか孔雀のところから戻って来なかった。  仏間の窓を音を立てないように開ける。  風鈴がぶら下がった窓は開けっ放しで、部屋の中がうかがえた。  窓に向かって小さな机が設置され――ここで小説を書くというのは本当だったようだ――その他には大きな桐のタンスが2つ置かれていた。  物置として使っているようだった。  亮と孔雀の話し声か何かが聞こえてくるかと耳をそばだてた。  蝉の鳴き声がうるさい。  だが、その間をぬってそれは聞こえた。  夏奈は耳を疑った。  聞こえてきたのは女の喘ぎ声だった。  この家に孔雀以外に誰かいるのか?それも女。  いや、ここには孔雀以外誰もいないはずだ。  だとするとあの声は孔雀の声なのか?  ぞわりと全身に鳥肌が立った。  想像したくもないが、あられもない姿の孔雀が頭に浮かんでしまう。
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