ファンレター

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 ……いったいどうして彼女は俺に挨拶をしたのだろうか、そんな事を考えながら通勤のために乗る電車を待っていた。彼女は俺とは何も関わりが無いし、そもそも俺は彼女の事をよく知らない。じゃあいったい何で挨拶できるのだろうか。このご時世そんな事は滅多に無いというのに大したものだ。  そう考えながらふと上を向いた。そこにはとある栄養ドリンクの広告が貼ってあった。『どんな疲れも一気に撃破!!』そんなうたい文句が書いてあった。俺は淡い笑みを漏らした。そんなモノで疲れを取って何になる、ただ仕事に縛り付ける枷にしかならないのに。 「2番ホームに電車が参ります…」  一つのアナウンスが俺の小さな考えをかき消した。
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