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私は田宮一郎。
週刊誌「東方倶楽部」に降魔一郎(ごうまいちろう)というペンネームで『降魔一郎の東方異聞録』なる心霊現象や都市伝説、パワースポットを紹介する記事を書いています。
私のような人間のことをあまり好意的に思わない人たちがいます。
まぁ、いろいろですが、よくあるのが"お前が取り上げたどこそこの心霊スポットに行ったが何もなかった。お前には見えるのか"というたぐいの話です。
そんなときは本当に困ってしまうのです。
何が困るかって、背中に”そんなもの”をしょい込んでやってこられては迷惑というものです。
では、その方がどんなものをしょい込んで来たのかというお話をしましょうか。
彼は郊外にある廃墟になった病院跡地に行ったそうです。
いや、行ったのはまちがいないですね。
いわゆる”心霊スポット”に夜中に大勢でいって、ギャーギャー騒いでいたのでしょう。
見ればわかります。
なぜなら私には見えてしまうのですから。
”それ”は相当に彼に怒っていて、私の存在など気にならないのでしょうね。
ずっと睨みつけています。
ずっと、ずっと。
そういう存在がはたして、彼に危害を加えることができるのか、私にはわかりません。
しかし、”それ”はその気でいることは見てわかります。だから私は彼にこんなふうに忠告をしてあげました。
あなたはたとえば、そういう場所に、そういう存在がいたとしてですよ。あなた方のような存在をどのように思うのだろうと想像したことはありますか?
もっと言ってしまえば、もしもあなたが逆の立場だったらどう思うのか想像できますか?
もしそれができないというのであれば、よろしい。私が教えてあげましょう。
いや、聞きたくないと言っても駄目ですよ。あなただって、私が聴きたくもないような話をさっきまで散々してきたのですから、少しくらいは私の話しも聞いてください。
それが礼儀というものであり、フェアというものですよ。
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