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私はただ、些細なことから罪悪感――これは"立場を置き換えたら"とか、大人の私に対して"無礼な振る舞い"をしたことをあなたにわかるように"気づかせて"あげたことによって、思考の方向の誘導に成功したわけです。
あなたはそれを"ペテンにかけられた"と思うでしょう。
確かにこれは一種の心理ゲーム、或いは詐欺師がよく使う手ということになりますが、いやいや、何も特別なことではないでしょう。
人間社会と言うのは多かれ少なかれ、騙し合いをして日常を過ごしているのです。
もっと言えば上手に騙されながら、被害を最小限にとどめるよう努力をしているのです。
たとえばどう見ても、誰が見ても、容姿に問題がある女子に対しても、あなたは美人に対応するのと同じように接することができる大人でしょう。
子供のようにブスだ、デブだとからかったりはしないでしょう。
それはお互いが傷つかないよう、精神が痛まぬように人間が自然と身に付ける生きる手段なのです。
ですから私は普段見えてしまうことを、あからさまに"私には見える"などとは言わないのです。私は子供の頃に大きな失敗をしました。人に見えないものが見えるということが、いかに他人を不安にさせるのかということに無頓着だったのです。
私が子供の頃に体験した話は、またの機会にお話をしたいと思いますが、まぁ、兎に角、私はこう言いたいのです。
"ガキが、大人を怒らせるんじゃない"とね。
あなたの後ろにいるその男は”これこれこういう格好をしていて、顔立ちはこんな感じで、強いて言えばだれだれに似ている”とあなたがイメージしやすい人物像を話して聞かせたとします。
それで、そういう人が隙さえあれば、あなたに危害を加えようとしている。
今ここでは問題ない。何も起きたりはしない。
ですが、たとえば人気の少ない駅のホームや建物の屋上は避けた方がいいとか、公園のトイレに入った時は、下手に上を見ないほうがいいとか、夜中に起きてトイレに行ったとき、鏡はなるべく見ないほうがいいとか、そういう話をしたとします。
さぁ、あなた、どうです?
実際にお話ししましょうか?
本当のことを――。
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