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残念ながら、私は神職の人間でもなければ、払うことを生業としているわけでもない。ただ見えるだけで、できるだけ見ないようにするにはどうすればいいかを知っているだけです。
そしてあなたが今、見えていないものを、見えるようにすることも、わたしにはできるのですよ。
見たいですか?
"幽霊の正体見たり枯れ尾花"
昔の人はよく言ったものです。そこまで怯えてしまっては自分の影にすら驚いて腰を抜かしてしまうでしょうね。
まあ、あなた、それも自業自得というものですよ。
えっ?
どうしたらいいかって。
まずはその廃墟の病院とやらに行くことです。
もちろん一人で。
万が一のために途中まで車で誰かに送ってもらい、そうですね。1時間たっても戻ってこないようなら、様子を見に来てほしいとか、警察を呼んでほしいとか、そのくらいの保険は掛けておいても損はないでしょう。
もちろん警察の場合は、そのあとたっぷりと絞られるでしょうから、なるべく信用できる仲間を呼んだ方がいい。
君にそういう友達がいればの話だけれども。
そして病院の中には一人で入る。
前回どこをどう歩いたか覚えていますか?
覚えている――よろしい。
であれば、その道順で病院の中を歩きながら、ずっと謝り続ける。
ひたすらごめんなさい、申しません、許してくださいといいながら、自分が前回歩いた道をたどるのです。
その中に”彼が”好んでいた場所があるはずですから、きっとそこで許してくれるでしょう。幽霊と言えども、もとは人間です。きちんと謝罪をすれば、わかってもらえるでしょう。
ただし、これだけは気を付けてください。
たとえ何があっても、あなたは後ろを振り向いてはいけない。
病院に入って、病院を出て、車に戻るまでは、決して振り返ってはいけない。
もし振り返って、その時あなたが何かを――そう、だれそれに似たその人物やそれらしき影を見てしまい、その何かと目があった瞬間、その男は完全にあなたに取り憑き、あなたによからぬ気を起こさせ、そっちの世界に引きずり込むかもしれない。
そうなってしまっては、もう私にどうすることもできないから、その時はしかるべき神社や寺や教会に行って専門の方に診てもらうしかないでしょう。
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