マダム・リーの結婚相手診断

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 原付での帰宅中に交通事故にあったらしい。  彼の実家、N県での葬儀にはゼミ生みんなで行った。  私はなんだかまだ、信じられないでいた。  ついこの前は、占いで結婚するなんて言われて浮かれていたのに。そんなのなかったことになったみたい。  すすり泣きながら、焼香。  彼のお母さんが、私たちに大学での話をきかせてほしいと言ってきたので、通夜のあと少し残った。  みんなに好かれていた彼の話を、優秀な彼の話を、ちょっとおっちょこちょいだった彼の話を、お母さんは泣き笑いの顔でずっと聞いていた。 「また明日の告別式で」  そう告げて帰ろうとしたとき、お母さんにそっと耳打ちされた。あなたにだけ話したいことがある、と。  内心首を傾げながらも、適当な言い訳をしてみんなには先に宿に行ってもらう。そっと戻ると、お母さんがケータイを片手に待っていた。 「あの子、あなたのことが好きだったらしくて。ケータイの中にも、あなたの写真や送りそこなったメッセージが残ってたんです」  見せてもらうと、確かにそこには隠し撮りしたっぽい私の写真や、誘おうとしてやめてしまったらしいメールが残っていた。まあ正直ちょっと引いたけど……、でもうれしい。そして、くやしい。やっぱり彼は私の、結婚相手だったんだ。 「私も……、彼のこと、好きでした」  泣きそうなりながらつぶやくと、 「ああ、ならよかった」  お母さんが、ほっと安心したように言った。 「なら、あなたは、花嫁になれるわね」  お母さんがそういった次の瞬間、衝撃と、腹部が熱くなった。痛い。また衝撃、痛み。  おなかから、血が流れている。お母さんに刺されて。  倒れそうになるのを、支えられる。 「まだ間に合うわ、火葬は明日だから。あなたも棺にいれてあげる。大丈夫、白い花嫁衣裳、私が着ていたのをとってあるの、あの子の結婚式に、お嫁さんに着てもらおうと思って。ねぇ」  視界がにじむ。涙が出る。脂汗も。痛い、痛いいたい。こわい。  血が滴る包丁を持ちながら、お母さんは微笑んだ。優しい声で続ける。 「ようこそ我が家へ、花嫁さん」
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